本学会について  About JACR

理事長挨拶

1.理事長挨拶「就任のご挨拶と本学会の課題」

特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会 理事長 後藤葉一
(公立八鹿病院 院長)

 

このたび伊東春樹前理事長の後任として、特定非営利活動法人 日本心臓リハビリテーション学会の第6代理事長を拝命しましたので、ご挨拶申し上げます。
日本心臓リハビリテーション学会は、心臓リハビリテーションの普及と質の向上をめざす団体として1995年に発足し、今年(2014年)で満20年を迎え、現在では会員数1万人を超える大きな学会に成長しました。今回、その理事長を務めることに大きな責任と使命感を感じています。

当学会が推進すべき事業として、3つの大きな課題が挙げられます。第1は、会員への情報伝達・教育研修や会員相互の情報交換・交流を通じて、心臓リハビリテーションに関わる個人の資質の向上や人材育成を推進することです。第2は、学術団体として、心臓リハビリテーションの更なる普及と質の向上を図ることにより、心血管疾患患者の生活の質(QOL)と長期予後の向上に寄与することです。そして第3は、循環器関連の諸団体と連携・協力して、心血管疾患の初発(一次)・再発(二次)予防に努め、国民の健康寿命の延伸に寄与するという社会的使命を果たすことです。

第1の課題である「会員の資質の向上や人材育成」に関しては、本学会は2000年に「心臓リハビリテーション指導士制度」を創設し、毎年、研修・講習・認定試験を実施し、これまでに3000人以上の認定指導士を世に送り出し、質の高い心臓リハビリテーションの提供に努めてきました。それに加えて来年度から、さらに高いレベルの人材育成を図るために、「心臓リハビリテーション認定医/上級指導士制度」の創設を計画しています。また、研究発表・情報交換と相互交流の場として、年次学術集会および指導士スキルアップセミナー開催に加えて、各地方において「心臓リハビリテーション学会地方会」を立ち上げる準備を進めています。さらに、会員連絡メールシステムや学会誌「心臓リハビリテーション(JJACR)」の充実を図ることも課題です。

第2の課題である「心臓リハビリテーションの普及と質の向上」はわが国においてきわめて重要なテーマです。心臓リハビリテーションは、最近30年間で「退院と社会復帰をめざす機能回復訓練」から「QOLと長期予後の改善をめざす包括的介入プログラム」へと大きな変貌を遂げました。しかも、運動耐容能・QOL・長期予後に対する有効性が多数の臨床エビデンスにより裏付けられていることから、現在では日・米・欧の冠動脈疾患治療ガイドライン・心血管二次予防ガイドライン・慢性心不全疾患診療ガイドラインにおいて「クラスⅠ」の医療として強く推奨されています。ところが、わが国では歴史的経緯・医学教育カリキュラム・施設基準などのさまざまな要因により、心臓リハビリテーションの普及は大幅に遅れており、全国実態調査によると、循環器専門医研修施設における冠動脈インターベンション実施率96%に対して、外来心臓リハビリテーション実施率は21%と著しく低値です。すなわち、わが国において心臓リハビリテーション、特に外来心臓リハビリテーションの広範な普及を図ることが喫緊の重要課題です。これに関して、本学会では、毎年市民公開講座を開催して心臓リハビリテーションの社会的認知度の向上を図るとともに、2013年には「急性心筋梗塞心臓リハビリテーション標準プログラム」を完成させて多数の医療者に配布しました。さらに2014年からは、「心臓リハビリテーション症例レジストリー制度」を創設して国際比較に耐える多施設データベースの構築を開始しました。これらの事業を引き続き推進し、わが国の心臓リハビリテーションの更なる普及と質の向上に努めます。

第3の課題、「心血管疾患の初発・再発予防を通じた国民の健康寿命の延伸」は今後のわが国においてきわめて重要な課題です。これまでの循環器診療は、虚血性心疾患・心不全・院外心停止のいずれの分野においても「発症後の火消し治療」が主体で、「発症以前の予防介入」への取り組みは十分ではありませんでした。「虚血性心疾患による死亡の70%は虚血性心疾患既往患者から発生する」、「健常者でも心不全患者でも身体活動量が少ない場合は将来の心不全発症リスクが高い」、「院外心停止の発生リスクは心筋梗塞既往患者では健常者の17倍高い」といったデータから、高リスク保有者への予防介入の重要性は明らかです。また超高齢化時代を迎え、サルコペニア・フレイルが心疾患患者の新たな予後規定因子として浮上し、高齢心疾患患者に対する適切な運動指導の重要性が増しています。さらに、将来へ向けて持続可能な医療・福祉体制を構築するためには、医療・介護における発症予防重視・費用対効果重視・在宅化の方向性は避けられません。これらを考慮すると、わが国において、生活習慣改善や身体活動量増加による循環器疾患の初発・再発予防の大きなうねりを創出し持続させることがきわめて重要です。ただし、これはきわめて大きな課題であり、本学会のみの力で達成できるものではありません。日本循環器学会・日本循環器病予防学会などの学術団体、厚生労働省・文部科学省などの政府・自治体、さらにマスコミなどと広範に連携・協力して、学校教育・医学部教育・医療政策・社会的認知度など教育・行政・社会文化にわたるあらゆる領域で推進すべき課題です。本学会はこの大事業にも率先して取り組んで参ります。

最後に特筆すべきは、多くの学会が「医師を正会員、非医師を準会員」としているのに対し、本学会では「医師も非医師も正会員」としている点です。超高齢化・重複障害時代において、「QOL向上・再入院防止・長期予後改善・健康長寿の実現」は医師のみでは到底実現不可能であり、多職種チームによる多面的介入が必須です。この点において、本学会はまさに時代を先取りした先進的な学会であると自負しています。今後2年間の在任中、わが国における心臓リハビリテーションの普及および質の向上と本学会の更なる発展をめざして、微力ながら精一杯務める所存ですので、どうぞよろしくご支援ご鞭撻のほどお願い申し上げます。