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栄養学の面からアプローチ

2.栄養学の面からアプローチ

心臓病が気になる人の食事療法としては、危険因子となる脂質異常症、高血圧、肥満などの改善を考えることが必要です。そのためには、エネルギー・塩分・コレステロールに注意して、バランスのよい食事をすることです。

ここでは心臓病の人の食事療法について、Q&A形式でご紹介いたします。

Q01心臓病の人の食事は、まずなにに気をつければいいでしょうか?

A01

バランスのよい食事とは、からだに必要な3大栄養素である炭水化物・たんぱく質・脂質のほか、ビタミン・ミネラルなどの栄養素を、過不足なく食事の中で補給することです。それには、主食、主菜、副菜の組み合わせが適切であることが大切です。そういった規則正しい食生活を続けることが、食事療法の基本となります。

Q02品目は多いほうがよいのでしょうか?

A02

どんな食品をどれだけ食べればよいかについては、6つの基礎食品から、1日30品目を目安に、多くの食品から、各栄養素を補給するのがよいでしょう。
なお、心臓の薬と食品の間には、薬の作用を強めたり、弱めたりするものがあるので注意が必要です。

Q031日のエネルギー量(カロリー)に、どのくらいを目安にしたら良いかについて教えてください。

A03

あなたが、1日にどれだけ食べてもよいかについては、あなたの体重(標準体重)や日常の活動量によって決まります。適量を超えたエネルギー摂取は、肥満につながるばかりでなく、生活習慣病の危険因子を促進します。
具体的な栄養のとり方やその注意については、かかりつけの医療機関に相談するとよいでしょう。

● エネルギーの計算の仕方(例)

身長(m)×身長(m)×22(BMI)=あなたの標準体重(kg)

あなたの1日のエネルギー量(カロリー)=標準体重×25~30kcal

Q04各栄養素についてもう少し詳細に教えてください。

A04

6つの基礎食品について紹介します。参考にしてください。

  1. たんぱく質

    たんぱく質は血液や筋肉のもとになる栄養素です。たんぱく質を十分摂取することは、血管を弾力性のあるものにし、動脈硬化を防ぎます。しかし、とりすぎると、肥満やコレステロール血症になりますので、良質のたんぱく質を多く含む食品を動物性、植物性のものから、偏らず、バランスよく取り合わせましょう。

  2. 脂質

    脂質は炭水化物やたんぱく質とともに、エネルギー減として貴重な栄養素です。しかし、とりすぎは肥満の原因となりますから注意しましょう。

    脂肪には飽和脂肪酸(肉、チーズ、チョコレート等)、不飽和脂肪酸があり、さらに不飽和脂肪酸には、厳密には一価不飽和脂肪酸と多価飽和脂肪酸があります。多価不飽和脂肪酸は、植物油、魚油、大豆製品等に多く含まれています。また、不飽和脂肪酸は酸化しやすい欠点があるので、保存に注意することと、ビタミンC、E、ベータカロテン(ベータカロチン)といった酸化防止作用のある栄養素を一緒にとることが大切です。多価不飽和脂肪酸のうち、植物油に多く含まれているn-6系は摂りすぎによりコレステロールがT-CHOを下げますが、HDLも減らしてしまいます。

  3. 炭水化物

    炭水化物は糖質ともいって、ご飯やパン、いもの主成分であるデンプン、砂糖・果糖などの糖分をまとめていいます。砂糖をたっぷり使った甘いお菓子や、果糖に富んだ果物を食べ過ぎると、余分な糖質は肝臓の中で中性脂肪となって血液中に増えます。中性脂肪が増えることにより、、動脈硬化を進行させます。[砂糖の役割と上手な摂りかた]

    ・砂糖は適量なら、疲労感を除きストレス解消になりますが、過剰だと肥満、糖尿病、虫歯の原因、またビタミンB1の不足を生じるので、怒りっぽく、イライラした状態になります。<ビタミンB1を多く含む食品(豚肉・大豆・きなこ・ごま等)>

    ・コーヒー、紅茶には砂糖をなるべく入れない習慣をつけ、清涼飲料水のがぶ飲み、お菓子類の[ながら食い]はやめましょう。

  4. 食物繊維・ビタミン・ミネラル

    食物繊維は血液中のコレステロールの値を下げ、血糖の急上昇を抑え、また、満腹感が得られるため、肥満の防止になります。さらに、腸の調子を整えるため、便通を良くする働きがあります。現在の日本人の食物繊維摂取量は16g程度ですが、年々減る傾向にあります。食物繊維は積極的に摂取するように心がけることが大切です。特に根菜類・豆類・いも類・海藻類に多く含まれますが、単一の食品から必要量を摂取するのは難しいので、いろいろな食品から摂取することを心がけましょう。

    ビタミンは、生理機能を円滑に調整する作用を持ち、中でも、ビタミンC、E、ベータカロテンはコレステロールの沈着を防ぎ、血管をしなやかに保ちます。ミネラルのうちカリウムは、ナトリウムの排泄を促して血圧を下げる効果があります。カリウムは水に溶ける性質があるので、煮汁を利用した献立(スープ・煮びたし)をお勧めします。ビタミン・ミネラルを豊富に含んだ野菜、果物、いも類を積極的に取り入れ、野菜は生だけではなく、あえもの、炒めもの、鍋もの、煮物など加熱したほうが量を多く食べられるので調理で工夫しましょう。

Q05濃い目の味付けが好みなのですが・・・。

A05

食塩は調味料としてよく使われていますが、摂りすぎると血圧を上げたり、血液量が増したりして、心臓に負担をかけます。
食塩に含まれるナトリウムは、体内に水をとどめる働きがあり、食塩を多く摂ることで体液の料が増加し、血圧が上がると考えられています。
このため、心不全の人には、食塩と水分の制限があることは、よく知られています。

食塩の1日の総摂取量は10g以下にしましょう。すでに心臓の働きの弱っている人や、血圧の高い人は1日8gあるいはそれより少なめに抑えましょう。高血圧予防には、男性9g未満、女性7.5g未満です。

Q06減塩のポイントを教えてください。

A06

味付けと調理にひと工夫すれば、薄味でもおいしく食べられます。以下のような工夫をぜひしてみてください。

  1. 酸味をつければ薄味でも十分おいしくいただけます。
  2. 香味、辛味で味にアクセントを。
  3. 天然だしでうま味を。
  4. 香ばしい焼き加減に。
  5. 少量の油で風味とコク。
  6. 旬の材料を使い素材のうま味を生かしましょう。
  7. 塩味はいずれか1品に集中させて。
  8. 汁ものは具だくさんに。
  9. 適温も味のうちと知る。
Q07お酒が好きなのですが、心臓病を患ったら断酒しなければなりませんか?

A07

まずは主治医と相談してください。適量であれば飲んでもよいということであれば、1日量の目安は以下の通りです。

注意)人により異なります。必ず主治医と相談してください。

  • ビール中瓶(633ml)はアルコール度.7%、1本 アルコール29.8ml、23.5gです。
  • 日本酒1合(180ml)はアルコール度15.4%、27.7ml,22.1g。
  • ウィスキーシングル3杯(シングル一杯30ml)アルコール度40%、36ml, 28.7g。
  • ブランデーシングル3杯(シングル一杯30ml)アルコール度40%、36ml, 28.7g。
  • ワイングラス3杯(100ml×3杯)アルコール度11.6%、34.8ml、27.8g。
  • 焼酎 0.5合(90ml)アルコール度25%、22.5ml、17.9g。
Q08ワーファリンという薬を処方されているのですが、注意すべきことはありますか?

A08

ワーファリンとは抗凝固剤のことです。これを服用している場合、ビタミンKを含む下記の食品の摂取には注意が必要です。

  1. 納豆は禁止です

    納豆にはビタミンKが多く含まれます。腸内細菌に納豆菌が作用すると、通常の200倍ものビタミンKを合成し、ワーファリンに対して拮抗作用を示します。ねばりのない納豆も最近ではみられますが、ねばりの有無にかかわらず、納豆菌の作用により納豆になるわけですから、食べないようにしてください。

  2. ビタミンKを多く含む野菜(キャベツ・小松菜・ほうれん草・春菊)を、一度にたくさん食べないようにしましょう。

  3. クロレラは摂取しないようにしましょう

    ビタミンKは血液が凝固する仕組みの中で、凝固因子が合成されるのを助けます。つまり血液を固まらせる役目をするため、ワーファリンとは作用が拮抗するわけです。

Q09カルシウム拮抗剤という薬を処方されました。何かワーファリンのときのような注意点はありますか?

A09

グレープフルーツジュースは、カルシウム拮抗剤のうち、ジヒドロピリジン型という種類に属する薬の作用を増強するといわれています。この薬を服用する前後(2~3時間以内)にグレープフルーツジュースを飲まないようにしましょう。ただし、グレープフルーツや、そのジュースを絶対に口にしてはいけない、というのではなく、薬を服用する時間帯とずらして食べることはかまいません。